医療機関は一般的に「○○病院」や「○○クリニック」など、2つの名称に分けられます。
特に気にすることもないこの名称ですが、その中身や地域医療に対する役割には大きな違いがあります。
そのため、どの医療機関がどのような役割を持っているかを把握しておくと、病気やケガをしたときにスムーズに受診を行うことができます。
今回は、病院とクリニックの違いと地域に対する役割について解説していきます。
病院とクリニックは「病床数」で区別される
まずは、病院とクリニックでどのような部分に違いがあるのかを説明していきます。
病院とクリニックは「病床数」で区別されます。
医療機関において、患者が使用するために用意されたベッドの数のことを「病床数」と言い、この病床数が20床未満(0~19床)であればクリニック、20床以上であれば病院という扱いになります。
医療機関 | ベッドの数 |
---|---|
クリニック | 20床未満(0~19床) |
病院 | 20床以上 |
「○○床」の読み方!?
医療機関の入院ベッド数は「○○床」と記載されますが、この読み方は「床(しょう)」という読み方をします。
クリニックは「外来診療」をメインに行う
クリニックは病床数が0~19床の医療機関になりますが、この用意されているベッドは、患者が入院するために用意されたものではありません。
外来診療において点滴をする場合や、検査前後に患者を休ませる目的で用意されているものです。
つまり、クリニックでは外来診療は行いますが入院診療は行いません。
そのため、クリニックでの受診において入院の必要性が確認された場合には、入院ができる病院へ紹介されることになります。
クリニックのベッドの目的
クリニックのベッドは、患者が入院するためのベッドではなく、簡易的な治療を行うために使用されます。例を挙げると、点滴をするのために1時間ほど横になる場合や、検査で麻酔を使用し麻酔がきれるまでの間に横になる場合になります。
病院は病床数で「中小病院」と「大病院」に分類される
ベッド数が20床以上の医療機関は「病院」として扱われますが、その病床数によって病院も”中小病院”と”大病院”に分類されます。
中小病院は地域医療を支える中核病院の役割を果たしています。
また、大病院は病床数200床以上の病院で、国立病院や大学病院などの総合病院がこれにあたります。
200床以上の病院は「大病院」
病床数が20床以上の場合には、”病院”という扱いになりますが、200床以上の病院の場合には”大病院”という扱いになります。
「クリニック・中小病院・大病院」の特徴と役割
外来診療をメインに行うクリニックと、地域医療を支える中小病院、そして、先進医療などに取り組む大病院では、同じ医療機関でも特徴やその役割が大きく異なります。
①クリニックの特徴・役割
クリニックは、20床未満(0~19床)の病床を備えた医療機関で、主に軽いケガや病気などの高度な治療を必要としない患者や、定期的な検査などを行う目的で受診する患者を診療しています。
以前は、細かい検査などを行えないクリニックが多かったのですが、現在ではMRIやCTなどの高額の医療機器を用い、専門的な検査を行えるクリニックも増えてきました。
特定の診療に特化しているため、病気を見つけるという意味では、病院よりも診断能力の高いクリニックも存在します。
診察によって、精密な検査・治療、また入院診療が必要だと判断した場合には、中小病院や大病院に紹介を行います。
②中小病院の特徴・役割
中小病院は、20~199床までの病床を備えた医療機関で、クリニックで診るような軽いケガや病気などの患者のほか、高度な治療を必要とする患者も診ることがあり、クリニックと大病院の中間に位置する役割を担っています。
入院診療については、病床の種別(急性期・回復期・慢性期など)によって入院する患者の症状や状態が異なります。
- 急性期病床:手術が必要な患者や術後まもない患者の治療
- 回復期病床:手術後から一定の期間の患者の回復を促す
- 慢性期病床:長期療養が必要な患者の入院
③大病院の特徴・役割
大病院は、200床以上の病床を備えた医療機関で、国立病院や大学病院などの総合病院であることがほとんどです。
このような医療機関では、高額な医療機器による精密検査に加え、大きな手術や治療なども行われています。
また、研究機関として多くの病気や症例の研究も行われています。
スムーズな診療を受けるために心掛けること
病院とクリニックは、同じ医療機関ですがその特徴や役割が異なるため、スムーズな診療を受けるためにはうまく使い分けることが重要です。
前項で説明をした通り、クリニックは軽い症状の病気やケガを診療するのが主な役割であり、もしそこで大きな病気が見つかれば中小病院や大病院に紹介してもらえます。
そのため、まずは症状に合わせた近隣のクリニックを受診することがスムーズな診療に繋がります。
この受診については中小病院でも構いませんが、大病院を最初から受診するのはおすすめしません。その理由は後述します。
スムーズな診療のために!!
最初はクリニックを受診
まずは症状に合わせたクリニックを受診する。受診の際に、精密な検査が必要と判断された場合には、検査が可能な病院に紹介状を書いてもらう(多くの場合が大病院での精密検査)。
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病院で精密検査を実施
病院で精密検査を受ける。その結果を踏まえ、必要なら治療を受ける。手術が必要なときには入院になることが多い。治療が終了すると、紹介元のクリニックや通いやすい近隣の病院へ紹介される。
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治療後の経過観察
紹介されたクリニックや病院で経過観察を行う。
大病院を最初から受診しない方がいい理由!?
先ほど、”大病院を最初から受診するのはおすすめしません”というふうに説明しましたが、これには理由があって、大病院を受診する際には他院(クリニックや中小病院)からの紹介状がない場合、「選定療養費」という別途料金がかかる仕組みになっているからです。
この選定療養費はどこの大病院も約5,000円になります。
また、大病院には多くのクリニックや中小病院から紹介を受けた患者が、予約をとって来院しています。
そのため、紹介を受けずに初診で大病院を受診する際には、診察までにかなりの時間がかかります。
紹介状がない状態で大病院を受診すると、予約をとっていないのでかなりの待ち時間があるのと、選定療養費(約5,000円)がかかります。この予約はクリニックや中小病院からの予約を取ってもらう仕組みになっており、個人的に予約を取ることはできません。
紹介状(診療情報提供書)とは?
最初に受診した医療機関から、別の医療機関を紹介されその医療機関を受診する場合、紹介状を渡されます。この紹介状は正式には「診療情報提供書」と言い、患者の症状や検査結果、服用薬などの医療情報が詳細に記載されています。紹介先の医療機関は診療情報提供書の情報があることで、スムーズな診療を行うことができます。
なぜ「選定療養費」を支払うしくみがあるのか?
大病院を他院からの紹介状なしで受診すると、「選定療養費」として約5,000円も別途費用がかかってしまいます。なぜこのような費用がかかる仕組みをつくっているのか不思議ですが、これにはきちんとした理由があります。
以前、選定療養費がないときには風邪などの軽い症状でも大病院を受診される患者が多く、それによって、専門的な検査や治療が必要な患者がすぐに診察を受けることができない状況に陥っていました。
そのため、軽い病気やけがなどのときには、クリニックや中小病院を受診するようにするために、選定療養費という仕組みをつくり、大病院を本当に受診する必要性の患者が集まるようにしました。
医療機関の「診療科」をきちんと把握しておく
病院やクリニックには、どのような診療を専門的に行っているかがすぐに分かるように「診療科」というものが掲げられていますが、この診療科を確認しておくことでスムーズな診療を受けることができます。
この診療科には、”眼科・皮膚科・耳鼻咽喉科・内科・外科・脳神経外科 など”たくさんのものがありますが、仮に腹痛がずっと続いているのに皮膚科を受診しても、専門外なので他の病院を受診するように促されるだけです。
そのため、自分が体調不良になったときに受診する病院やクリニックをあらかじめ把握しておくことが大切です。
普段何かあったときに受診する病院やクリニックの医師のことを「かかりつけ医」と言います。
病院とクリニックの違いと特徴|まとめ
医療機関は、病床数によって病院やクリニックに分類されますが、病床数の違いだけでなく、その特徴や役割も大きく異なります。
そのため、病院やクリニックごとの特徴や役割を確認しておくことでスムーズな診療を受けることができます。
いつどのようなときに体調不良に陥るかは分かりませんので、あらかじめ自分が体調不良になったときに受診する病院やクリニックを調べ、備えておくことは大切なことです。