病院やクリニックなどの医療機関には、患者さんが受診された際に実施された医療行為や、その医療費がわかる領収証を無料で発行することが義務付けられており、その領収証が「診療費請求書兼領収書」と「診療明細書」になります。
医療機関で受ける診察や検査などの医療行為には、それぞれに金額が決められているので、この診療費請求書兼領収書と診療明細書を見ることで受診した際にどのような医療行為を受けたのかを確認することができます。
ただ、診療費請求書兼領収書や診療明細書に記載されている内容は、素人が見てもまったく理解ができません。
そこで、今回は、診療費請求書兼領収書と診療明細書に記載されている内容やその見方についてわかりやすく解説していきます。
「診療費請求書兼領収書」の内容と見方
医療機関ごとで書式は異なりますが、診療費請求書兼領収書は上の画像のようなものになります。この中に記載されている6つの項目について説明していきます。
- 保険の種類
- 負担割合
- 診療区分
- 保険適用・保険適用外・自費
- 保険点数(○○点)
- 予防接種、健康診断料など
①保険の種類
日本国民は国民皆保険制度のもとで公的医療保険に加入することになっており、加入していることを証明するものが健康保険証になります。公的医療保険には加入対象者ごとに種類があります。
健康保険の種類 | 概 要 |
---|---|
健康保険:組合健保 | 単独(700人以上)、共同(3,000人以上)の社員がいる企業が設立 |
健康保険:協会けんぽ | 組合健保以外の企業 |
健康保険:船員保険 | 船員 |
健康保険:共済組合 | 公務員 |
国民健康保険 | 自営業や無職の人 |
後期高齢者医療制度 | 75歳以上の方、65歳以上75歳未満で定められた障害認定を受けた方 |
②負担割合
医療機関を受診した際の診察料は、公的医療保険に加入している場合、一部の負担割合の支払いになります。
この負担割合は基本的に3割負担になりますが、一部の方については1割負担や2割負担の割合になっています。
年 齢 | 負担割合 |
---|---|
75歳以上 | 1割負担 |
70歳以上74歳まで | 2割負担 |
6歳(義務教育就学後)以上69歳まで | 3割負担 |
6歳(義務教育就学前)未満 | 2割負担 |
70歳以上の場合でも所得が「現役並み所得者(年収370万円以上)」に該当する方は3割負担になります。
③診療区分
医療機関で行われる医療行為は、その内容によりいくつかの診療区分に分類されています。診療費請求書兼領収書には診療区分ごとの医療行為の保険点数を合計した点数が記載されます。
※この保険点数の内訳を確認できるものが診療明細書になります。
診療区分 | 概 要 |
---|---|
初・再診料 | ・診察に関するお金 ・休日や病院の診療時間外に診察をしてもらった際の割増料金 |
医学管理等 | ・特殊な病状の場合に追加で徴収される割増料金 |
在宅医療 | ・自分の家で診察、治療を行った際のお金 |
投薬 | ・医師が患者様の病状に合わせて薬を選んでくれたときのお金 |
注射 | ・注射をしてもらったときのお金 |
処置 | ・体の症状に対して行う簡単な治療に関するお金 ・すり傷の治療 ・やけどの治療 ・浣腸 ・魚の目、たこの治療 ・リハビリでの電気治療 ・手術の必要のない骨折へのギブスの作成 など |
手術 | ・体の症状に対して行う複雑な治療に関するお金 ・切り傷、刺し傷への縫合 ・傷口を開く必要がなくても、折れた骨を動かして元の位置で固定する必要がある骨折 ・傷口を開き、折れた骨を元の位置で固定する必要がある骨折 ・爪白癬において爪を除去する治療 など |
麻酔 | ・痛みの症状に対して ”麻酔薬” を使用した治療をしたときのお金 |
検査 | ・体の症状や病状に合わせて行った検査に関するお金 ・検尿 ・採血 ・心電図 ・超音波(エコー)検査 ・胃カメラ など |
画像診断 | ・レントゲンに関する検査に対してのお金 |
リハビリテーション | ・リハビリテーションを受けたときのお金 |
精神科専門療法 | ・精神科で行う専門的な治療にかかるお金 |
放射線治療 | ・放射線治療を行った際のお金 |
病理診断 | ・組織を採取し病理診断を行った際のお金 |
入院料等 | ・入院に関するお金 |
④保険適用・保険適用外・自費
医療機関での診察料は公的医療保険に加入することで一部の負担割合での支払いですみますが、診療内容によっては保険が適用されないものもあります。
診療費領収書において、医療保険の適用になるものは「保険適用」の欄に、医療保険の適用にならないものは「保険適用外」に、医療保険を使用しないものは「自費」の欄に金額が記載されるようになっています。
保険適用 | 医療保険の適用になるもの |
保険適用外 | 医療保険の適用にならないもの |
自費 | 医療保険を使用しないもの |
保険適用
病院を受診した際に医療保険の適用になるものは、風邪などの病気や捻挫や骨折などのケガ、悪性腫瘍の治療など、患者様の身体に対して検査・治療が必要と認められるものです。
保険適用:診察代の一部を支払う
保険適用外
病院を受診したとしても医療保険の適用にならないものは、健康診断などの健康な状態な方が受ける検査や自分が綺麗になるために行う美容整形などです。健康診断については、医療保険の適用になりませんが、もし健康診断で何か病状が発見されたときには、その先に行う検査・治療は医療保険の適用になります。
保険適用外:診察代の全額を自分で支払う
自費
病院で手術や入院をしたことの証明するために、診断書を記載してもらうときなどにかかる金額にあたります。
自費:診察代の全額を自分で支払う
保険適用外と自費は同じ意味で使われることが多いです。
⑤保険点数(○○点)
医療機関で行われる医療行為は、医療行為ごとに診療報酬が定められています。定められている診療報酬には「○○点」という単位が使用されており「1点=10円」で計算されます。そのため、10点なら100円・50点なら500円・100点なら1,000円という計算になります。
※一緒に渡される診療明細書の合計点数と診療費請求書兼領収書の合計点数は同じ点数になります。
⑥予防接種、健康診断料など
医療保険は病気の疑いがある場合や、ケガをしている場合などのときのみ適用されるので、健康なときに行う予防接種や健康診断については別に記載されます。
- インフルエンザ予防接種
- 風疹・麻疹のワクチン
- 職場の健康診断
- 人間ドック
- 脳ドック など
「診療明細書」の内容と見方
医療機関ごとで書式は異なりますが、診療費請求書兼領収書は上の画像のようなものになります。この中に記載されている4つの項目について説明していきます。
- 診療区分
- 保険診療名
- 保険点数(○○点)
- 回数
①診療区分
医療機関で行われる医療行為は、その内容によりいくつかの診療区分に分類されています。診療明細書では行われた医療行為がすべて記載され、その医療行為に診療区分も記載されるようになっています。
※診療費請求書兼領収書には診療明細書に記載された診療区分ごとの保険点数の合計が記載されます。
診療区分 | 概 要 |
---|---|
初・再診料 | ・診察に関するお金 ・休日や病院の診療時間外に診察をしてもらった際の割増料金 |
医学管理等 | ・特殊な病状の場合に追加で徴収される割増料金 |
在宅医療 | ・自分の家で診察、治療を行った際のお金 |
投薬 | ・医師が患者様の病状に合わせて薬を選んでくれたときのお金 |
注射 | ・注射をしてもらったときのお金 |
処置 | ・体の症状に対して行う簡単な治療に関するお金 ・すり傷の治療 ・やけどの治療 ・浣腸 ・魚の目、たこの治療 ・リハビリでの電気治療 ・手術の必要のない骨折へのギブスの作成 など |
手術 | ・体の症状に対して行う複雑な治療に関するお金 ・切り傷、刺し傷への縫合 ・傷口を開く必要がなくても、折れた骨を動かして元の位置で固定する必要がある骨折 ・傷口を開き、折れた骨を元の位置で固定する必要がある骨折 ・爪白癬において爪を除去する治療 など |
麻酔 | ・痛みの症状に対して ”麻酔薬” を使用した治療をしたときのお金 |
検査 | ・体の症状や病状に合わせて行った検査に関するお金 ・検尿 ・採血 ・心電図 ・超音波(エコー)検査 ・胃カメラ など |
画像診断 | ・レントゲンに関する検査に対してのお金 |
リハビリテーション | ・リハビリテーションを受けたときのお金 |
精神科専門療法 | ・精神科で行う専門的な治療にかかるお金 |
放射線治療 | ・放射線治療を行った際のお金 |
病理診断 | ・組織を採取し病理診断を行った際のお金 |
入院料等 | ・入院に関するお金 |
②保険診療名
保険診療名には受診の際に行われた医療行為が診療区分ごとに記載されています。記載されている医療行為の名称は、「医科点数表の解釈」に記載されている医療行為の正式名称になるので少し難しく記載されていますが、名称を見ればある程度どのような医療行為なのかを確認することができます。採血検査などで複数の項目の検査をする場合には項目名も記載されています。
「採血検査」の保険診療名の記載例
- 末梢血液一般
- 血液化学検査(13項目)
- BIL/総、AST、ALT、ChE、γ-GT、TP、TG、HDL-コレステロール、BUN、クレアチニン、ナトリウム及びクロール、カリウム、LDL-コレステロール
- 内分泌学的検査(2項目)
- NT-proBNP、TRACP-5b
- B-V
- 血液学的検査判断料
- 生化学的検査(1)判断料
- 生化学的検査(2)判断料
「巻き爪の治療」の保険診療名の記載例
- 創傷処置(100㎠未満)
- 手術 8日
- 陥入爪手術(簡単) 1指
- 2%カルボカイン注 6mlV
- 非固着性シリコンガーゼ(凹凸部位用) 1枚
「膝のレントゲン撮影」の保険診療名の記載例
- 電子画像管理加算(単純撮影)
- 左膝関節
- 単純撮影(デジタル撮影) 2回
- 単純撮影(ロ)の写真診断 2回
③保険点数(○○点)
医療機関で行われる医療行為は、医療行為ごとに診療報酬が定められています。定められている診療報酬には「○○点」という単位が使用されており「1点=10円」で計算されます。そのため、10点なら100円・50点なら500円・100点なら1,000円という計算になります。
※一緒に渡される診療費請求書兼領収書の合計点数と診療明細書の合計点数は同じ点数になります。
④回数
記載された医療行為が行われた回数です。ほとんどの場合「1」になります。
「診療費請求書兼領収書」と「診療明細書」の考え方(スーパーの買い物を例に挙げて)
「診療費請求書兼領収書」は診療区分ごとの医療費の記載、「診療明細書」は診療内容や薬などの記載がされていますが、理解するには少し難しいのでスーパーの買い物を例に挙げて説明します。
ある日のスーパーでの買い物(2,450円)
- 魚類(500円)
- 刺身:8切れ:300円
- あさり:200g:200円
- 肉類(850円)
- 豚肉:500g:500円
- 鶏肉:450g:350円
- 野菜類(400円)
- キャベツ:1玉:150円
- ナス:3本:250円
- フルーツ類(700円)
- リンゴ:5個:400円
- みかん:6個:300円
上記の買い物情報を、「診療費請求書兼領収書」と「診療明細書」をつくる要領でまとめると・・・
診療費請求書兼領収書ではどのような種類の品目を購入したのかと、その費用の合計を表示するので、魚類や肉類などの項目とそれぞれの合計金額をまとめることになります。購入した品目は分かりませんが、どのような種類の品物を購入しなのかとその合計金額を把握することができます。
項 目 | 合 計 |
---|---|
魚類 | 500円 |
肉類 | 850円 |
野菜類 | 400円 |
フルーツ類 | 700円 |
ー | 2,450円 |
診療明細書では魚類や肉類などの項目に加え、詳細な品目やその量と金額をまとめていきます。購入した品物の詳細な情報を確認することができますが、合計金額はありません。
項 目 | 品 目 | 量 | 金 額 |
---|---|---|---|
魚類 | 刺身 あさり | 8切れ 200g | 300円 200円 |
肉類 | 豚肉 鶏肉 | 500g 450g | 500円 350円 |
野菜類 | キャベツ ナス | 1玉 3本 | 150円 250円 |
フルーツ類 | リンゴ みかん | 5個 6個 | 400円 300円 |
診療費請求書兼領収書と診療明細書|まとめ
医療機関を受診した際に渡される「診療費請求書兼領収書」と「診療明細書」は、その中身を確認することでどのような医療行為をされたのかを詳細に把握することができるようになっています。
「診療費請求書兼領収書」では医療費の合計金額、「診療明細書」では実施された医療行為の詳細を確認できますので、今回の記事を参考にしてぜひ確認されてみてください。