ヒトは死ぬまで常に健康でいることはできません。
日々健康に気を使っている方でも、体調不良に陥ることはあります。
そのようなときには病院を受診しますが、受診する病院にも専門とする分野があることをご存知でしたか?
”専門とする分野”として、病院ごとにどのような病気を専門として診療しているのかを分かるようにしているのが『病院の診療科』になります。
この病院の診療科には26種類もの種類があり、一般の方では理解しにくい診療科もあります。
そこで、今回は、病院の診療科についてどのような病気を専門的に診ているのかを解説していこうと思います。
病院を受診する際の参考にしていただければと思います。
「病院の診療科」の種類と診療内容
まずは、26種類ある病院の診療科について、その種類と診療内容を説明していきます。診療科の診療内容を確認することで、その病院がどのような医療を専門的に行っているのかを知ることができます。
診療科 | 診療内容 |
---|---|
内科 | ・手術以外の治療を行う診療科 ・風邪、高血圧、糖尿病などの薬の処方 ・インフルエンザの予防接種や健康診断 など |
循環器科(循環器内科、循環器外科) | ・心臓と血管に発症した病気の治療 ・心筋梗塞などの心臓の病気 ・大動脈瘤などの血管の病気 |
消化器科(消化器内科、消化器外科) | ・消化器に関する臓器の診療 ・食道、胃、腸などの食べ物の通り道 ・肝臓、胆嚢、膵臓など栄養を吸収するために働く臓器 |
呼吸器科(呼吸器内科、呼吸器外科) | ・呼吸器に関する臓器の診療 ・喉頭、気管、気管支、肺 など |
神経内科 | ・神経に関する病気を治療 ・脳、脊髄からなる中枢神経 ・中枢神経から細かく枝分かれする末梢神経 など |
脳神経外科 | ・脳と神経系に起きる病気を治療 ・手術が必要な脳の病気 ・脳梗塞、脳出血、くも膜下出血 など |
心療内科 | ・ストレスを原因として身体に症状が現れている患者を治療 ・心療内科は「身体」に出た症状を治療する(「心」に出た症状を治療するのは精神科) |
精神科 | ・心の病気や症状を治療 ・精神科は「心」に出た症状を治療する(「身体」に出た症状を治療するのは心療内科) |
外科 | ・手術を行い治療する診療科 |
泌尿器科 | ・腎臓、尿管、膀胱、尿道に起きる病気 ・腎臓の病気により、透析治療(血液の毒素を抜く治療)が必要なときも泌尿器科で対応 |
整形外科 | ・全身の骨、および関節の異常で生じる痛みや麻痺などを治療 ・打撲、捻挫、骨折などを診療 |
形成外科 | ・体の表面の外傷や変形などを治療 ・火傷のあとや手術後のケロイドなど、体の表面や形をできるだけ正常に戻し、日常生活に戻れるようにすることを目的とする |
美容外科 | ・顔の整形や豊胸手術など、医学的には正常でも本人の希望により手術を行う診療科 ・ほとんどが保険外診療 |
婦人科 | ・女性特有の病気に関する治療 ・子宮、卵管、女性性器などに関する病気の検診や治療 |
産婦人科 | ・妊娠検査、妊婦検診、分娩を行う産科と婦人科に関する治療 |
小児科 | ・新生児からだいたい15歳までの小児の病気を診療 ・風邪やインフルエンザ、おたふくかぜ、水ぼうそうなどの診療 |
眼科 | ・眼に起こる病気の治療や手術 ・眼鏡やコンタクトレンズを作成 ・レーシック、白内障の手術 |
耳鼻咽喉科 | ・耳、鼻、のどに起こる病気の治療や手術 ・中耳炎や蓄膿の治療 ・睡眠時無呼吸症候群などの治療 |
皮膚科 | ・皮膚に関する病気の治療 |
肛門科 | ・肛門周辺の病気の治療 ・痔の治療 ・大腸内視鏡を使用しての大腸の検査 |
麻酔科 | ・手術の際に患者さんに麻酔をかけることを専門 ・ペインクリニックでは身体の痛みを取る治療 |
放射線科 | ・レントゲン画像の読影や放射線治療を行う際に線量の治療計画 |
リウマチ科 | ・膠原病(こうげんびょう)を取り扱う診療科 ・慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎、結節性多発性動脈炎 など |
アレルギー科 | ・アレルギー疾患を取り扱う診療科 ・喘息(ぜんそく)、アトピー性皮膚炎、花粉症、食べ物アレルギー など |
リハビリテーション科 | ・神経や筋、骨格系の異常を原因とした運動機能障害者を対象として、医学的な治療や治療的訓練を実施する診療科 |
歯科・矯正歯科・小児歯科・歯科口腔外科 | ・歯に関連した疾患 ・虫歯の治療、知覚過敏、親知らず抜去など ・歯並びの矯正やインプラント治療など |
病院ごとに掲げられている診療科は、小さな病院では1~5つ程度、総合病院のような大きな病院ではたくさんの診療科が掲げられています。
病院にどのような診療科があるのかをどうやって調べるの?
それぞれの診療科においての診療内容を知ったとしても、その病院ごとにどのような診療科があるのか、その調べ方が分からなければ意味がありません。
では、病院ごとの診療科をどのように調べればよいのでしょうか?これは、病院ごとのホームページを確認することで簡単に確認することが可能です。
以前に比べ、自院のホームページを作成し、病院の紹介を行っている医療機関も多くなったので、インターネットでその病院を調べ、「診療科」を確認することでその病院にどのような診療科があるのかを調べることができます。
大きな病院になるとこれだけ多くの診療科が揃っています。
診療科の名前にある「○○内科」と「○○外科」の違いは?
一部の診療科では、「○○内科」や「○○外科」といった具合に”内科・外科”の語句が使われています。
循環器内科・循環器外科
消化器内科・消化器外科
呼吸器内科・呼吸器外科
この2つの違いは、単純に手術をメインに行うかどうかの違いです。
- 内科:手術以外の治療を行う診療科
- 外科:手術を行い治療をする診療科
そのため、
循環器内科 | 心臓と血管に発症した病気に対して手術以外の治療をする |
循環器外科 | 心臓と血管に発症した病気に対して手術による治療をする |
消化器内科 | 心臓と血管に発症した病気に対して手術以外の治療をする |
消化器外科 | 心臓と血管に発症した病気に対して手術による治療をする |
呼吸器内科 | 心臓と血管に発症した病気に対して手術以外の治療をする |
呼吸器外科 | 心臓と血管に発症した病気に対して手術による治療をする |
というふうに、専門としている臓器に対して手術をメインとして治療を行うかどうかを見分けることができます。
手術をしたくないからといって”○○内科”を受診したとしても、検査の結果、手術が必要な症例の場合には、”○○外科”を紹介されることになるので、その部分は勘違いしないようにしましょう。
なぜ「診療科」を調べて病院受診を行う必要があるのか?
「咳が止まらない・熱が下がらない・動悸がする・頭が痛い・めまいがする・お腹が痛い・足を怪我した・指を切った・湿疹ができた」など、病院受診をする理由は人それぞれです。
とりあえず、どこかの病院に行けばいいや・・・という気持ちで病院受診をしてしまうと、あとで面倒くさいことになることがあります。
仮に、体調が悪く適当に選んだ病院の診療科が症状とまったく関係のない診療科だった場合、「ここでは診断できないので ”専門の病院” に行ってください」と別の病院を紹介されることになるからです。
専門の病院を紹介してもらえるのはありがたいのですが、体の具合が悪いときに、別の病院へ移動するのはとても大変です。
しかも、紹介してくれる病院でも診察を受けた場合には、その病院の診察代も支払わなければいけません。
2つの病院を受診することによる無駄な費用の発生!?
- 最初の病院での診察料の支払い
- 専門の病院への移動費用
- 紹介された病院での診察料の支払い
この3つの事柄の中の「①最初の病院での診察料の支払い」と「②専門の病院への移動費用」については、きちんと病院の診療科を調べて受診していれば必要のない費用です。
しかも、体調不良のときに2つ目の病院に移動することを考えると気分的にも滅入ってしまいます。
また、仮に朝から病院受診を行っていたとしても、2つ目の病院への移動に時間がかかれば、午後の診察にまわされてしまうかもしれません。
このようなデメリットが起きてしまうリスクを考えると、自分の症状に合わせた診療科を選び、病院受診をすることはとても大切なことだということが分かります。
診療科ごとで「できる検査・できない検査」がある!?
すべての病院やクリニックで同じ医療機器を備えているわけではなく、掲げている診療科に必要な医療機器のみを備えています。
また、備えている医療機器のスペックも異なるため、医療機関ごとで「できる検査・できない検査」があります。
診療科ごとに異なる必要な医療機器
医療機関は掲げている診療科によって専門としている診療内容が変わります。そのため、もちろんそれに必要な検査内容も異なることになります。
例えば、整形外科を診療科として掲げている医療機関であれば、レントゲン撮影の機器や骨密度測定の機器、MRI装置などを設置していることが多いですし、循環器科を診療科として掲げている医療機関であれば、心電図計やCT装置などを設置していることが多いです。
診療科 | 行われる検査(一部 ) |
---|---|
循環器科 | ・心電図検査 ・心エコー検査 ・造影CT検査 |
消化器科 | ・胃透視検査 ・胃カメラ検査 ・腹部エコー検査 |
脳神経外科 | ・脳波検査 ・頚部エコー検査 ・MRI検査 ・CT検査 |
整形外科 | ・レントゲン撮影 ・CT検査 ・MRI検査 ・骨密度検査 |
医療機器の性能の違いによる影響
医療機器の性能の違いによる影響は、画像診断部門において起こりやすく、分かりやすい例ではMRI装置が挙げられます。MRI装置は、磁力を利用して画像診断を行う装置ですが、その磁力の強さが弱いスペックのMRI装置では撮影できない部位があります。
医療機器の性能の違いによる影響が出ないように、どの医療機関においてもスペックの良い医療機器を備えればよいように思いますが、それはコストの問題があるのでそうもいきません。良い医療機器を導入しても、検査数が少なければ医療機関は赤字になってしまうからです。
医療機関に設置してある医療機器の金額の概算を記載しました。この金額はあくまでも一般的なものです。医療機器の性能が良くなるほど、さらに高額になります。
医療機器 | 金額(概算) |
---|---|
心電図計 | 100万円 |
超音波検査機器 | 500~1,000万円 |
骨密度測定器 | 500~1,000万円 |
レントゲン撮影機器 | 500~1,500万円 |
CT装置 | 1,500~3,000万円 |
MRI装置 | 5,000万円~3億円 |
症状による「診療科」選びの具体例
たくさんの診療科の診療内容を把握できても、症状によってどの診療科を受診すればよいのかは分かりづらいです。そこで、よく耳にする症状と受診する診療科を組み合わせてみました。あくまでも具体例なので、参考としてご参照ください。
症 状 | 診療科 | |
---|---|---|
風邪や腹痛など一般的な症状 | ⇨ | 内科 |
ねんざ、骨折など骨や関節の症状 | ⇨ | 整形外科 |
頭痛、脳梗塞、認知症などの症状 | ⇨ | 脳神経外科 |
アレルギーなど皮膚の症状 | ⇨ | 皮膚科 |
ものもらい、ドライアイ、白内障 | ⇨ | 眼科 |
鼻炎、のどの痛み、風邪 | ⇨ | 耳鼻咽喉科 |
歯痛、知覚過敏 | ⇨ | 歯科 |
切れ痔、いぼ痔 | ⇨ | 肛門科 |
尿漏れ、残尿感 | ⇨ | 泌尿器科 |
女性の性器、子宮、卵管 | ⇨ | 婦人科 |
妊娠 | ⇨ | 産婦人科 |
案外知られていないのが、”風邪”の診察を耳鼻咽喉科もしてくれることです。風邪には鼻カゼや喉カゼがありますが、耳鼻咽喉科は鼻や喉を専門としているので診療してもらうことができます。
病院の診療科について|まとめ
病院の診療科の中身を知ることで、その病院がどのような症状を専門に診療を行っているのかを把握することができます。そして、診療科の中身を確認することで、自分がどの病院を受診すればよいのかも把握することができます。
どこの病院でもいいやと適当に病院を受診しても、結局、異なる病院を紹介され二度手間になってしまうことがあります。そうならないように病院受診をされる際には、受診する病院の診療科を確認してから受診するようにしましょう。