病院で行われる「CT検査」と「MRI検査」は、装置の見た目が似ているので同じ検査だと捉えてしまう方が多いです。
そのため、2つの検査を受けるときには
- さっきも同じ検査をしなかったっけ???
- この間も他の病院で同じ検査をしたような気がする???
というふうに不信に感じてしまうこともあります。
このようなときに検査を担当する診療放射線技師さんに質問しても、検査の合間なので多くの時間を取れるわけでもなく、短い時間での説明では理解しにくい部分もあります。
自分の体を調べる検査だからこそ、どのような検査なのかをしっかり理解して受けたいと思っている方も多いです。
今回は、CT検査・MRI検査の2つの検査にどのような違いがあるのかを、医療の知識がない方でもわかるように詳しく解説していきます。
CT装置とMRI装置の見た目
CT装置とMRI装置は見た目が似ているため、見慣れない方が見ると同じものに見えてしまいます。
そのため、同じ検査だと勘違いしてしまう方も多くいます。
下にCT装置とMRI装置の画像を載せましたがどちらがCT装置でどちらがMRI装置か分かりますか?
答えは、上の画像が「CT装置」、下の画像が「MRI装置」です。
CT装置とMRI装置では「ガントリーの長さ」が違う
装置の見た目がとっても似ているCT装置とMRI装置ですが、よく見ると「ガントリーの長さ」が違います。
ガントリーとは下の画像の赤矢印の部分です。
このガントリーはMRI装置の方がCT装置よりも長く、その分装置全体の大きさもMRI装置の方が大きくなります。
CT装置とMRI装置のガントリーの長さは、それぞれの装置ごとに若干の違いがあります。CT装置では100cm~150cm程度、MRI装置では150cm~250cm程度で、MRI装置の方がかなり大きい装置になります。
撮影(撮像)原理
CT装置では「X線の吸収率の差」を利用し撮影を行っています。
撮影はCT装置のガントリー内部にある”X線管(X線を発生する)”と”検出器(撮影部位を通過したX線を受け取る)”が対の状態で回転し、データを収集していきます。
MRI装置では「磁力」を利用し撮像を行っています。
人の体はそのほとんどが水分ですが、この水分子を強力な磁力によって励起させ、そこに特定の周波数の電波を照射します。
一定時間後に電波を切ることで水分子の励起が緩和されるのですが、この緩和の速度差をデータとして収集します。
画像再構成の方法
CT検査では撮影時に目的としている部位の「横断面(下の画像:緑の断面)」のデータを収集します。
そして、その収集したデータを用いて任意の断面の画像や3D画像を再構成していきます。
性能の良いCT装置ほど短時間で薄いスライス厚のデータを収集できるようになっており、その分きれいな再構成画像をつくることができます。
MRI検査では目的としている部位の「任意断面」を撮像時に一つずつ撮っていきます。
つまり、検査中に「矢状面(下の画像:赤の断面)・冠状面(下の画像:青の断面)・横断面(下の画像:緑の断面)」やその他の任意の断面の設定をして撮像を行うということです。
CT検査では何度も画像をつくり直せるがMRI検査ではできない!?
CT検査では収集データが残っていれば、そのデータから任意断面の画像を何度もつくり直すことができます。
それに比べ、MRI検査では検査中に必要な画像を一つ一つ撮像していく(下の画像)ので、検査後に追加で画像が必要なときには検査をしなおさないといけなくなります。
CT画像とMRI画像には似ているものもある
CT検査とMRI検査では撮影原理が異なるため得られる画像データももちろん異なります。
ですが、同じ断面の画像は似ているもの多く素人が見ると同じ画像に見えてしまいます。
頭部CT画像と頭部MRI画像の同じ断面の画像を見比べてみてもとても似ているのが分かります(左:CT画像 右:MRI画像)。
得意な撮影部位と病変
CT検査は「X線の吸収率」を用いているので、X線の吸収率の差が大きい部位の撮影に優れ、肺・腹部・骨などの撮影が得意です。
また、脳出血やくも膜下出血などの検出にも優れています。
MRI検査は「磁力」を用いており体内の水分子の量に影響されるので、水分子を多く含む部位の撮像に優れ、脳・脊髄・関節などの撮影が得意です。
水分子が少ない骨や空気については撮像できません。
検査 | 撮影(撮像) | 得意 |
---|---|---|
CT検査 | X線の吸収率 | 肺・腹部・骨・脳出血・くも膜下出血 |
MRI検査 | 磁力・水分子 | 脳・脊髄・関節・早期の脳梗塞 |
CT検査・MRI検査はそれぞれ得意な撮影部位、病変が定まっていますが、苦手な撮影部位においても「造影剤」という薬を使用することで画像を得ることができます。なお、造影剤の使用にあたっては副作用があるので造影剤の使用にあたっての説明と同意書へのサインを行います。
検査室の構造
CT装置は「X線」、MRI装置は「磁力」を用いるため、それぞれの検査室の構造も特殊なつくりになっています。
CT検査室ではX線が漏洩しないように壁や天井に「鉛シールド」が施され、MRI検査室では磁力が漏洩しないように壁や天井に「電波シールド」や「磁気シールド」が施されています。
このシールドがあることで検査室の外部への影響を防ぐことができます。
部屋 | 遮蔽すべきもの | 構造体 |
---|---|---|
CT室 | X線 | 鉛シールド |
MRI室 | 磁気・電波 | 磁気シールド・電波シールド |
もしも、CT検査室、MRI検査室それぞれにシールドが設置されていなかったらどうなるでしょうか???
CT検査室からはCT撮影のたびにX線が検査室の外に漏れてくることになり、検査室の近くにいる人はみんな放射線被ばくをすることになります。また、MRI検査室からは強い磁気や電波が漏れることになり、検査室の近くにある医療機器や携帯などに影響を及ぼす恐れがあります。
ちなみに、稼働前に行政が厳しくチェックするのでシールドが設置されていないということはありません。また、CT検査室については6ヵ月ごとに漏洩線量測定でX線が漏れていないのチェックを行うようになっています。
検査前の更衣
CT検査・MRI検査はともに更衣が必要になり、検査をするにあたって画像に影響を与えるものはすべて外し検査着に着替えます。
CT検査では 金属・硬質性のプラスチック などの「X線を吸収するもの」、MRI検査では「金属(磁性体)」がそれにあたります。
検査 | 障害になるもの |
---|---|
CT検査 | 金属・硬質性のプラスチック |
MRI検査 | 金属(磁性体) |
CT検査・MRI検査において障害になるもの |
---|
眼鏡・ピアス・ネックレス・ヘアピン・入れ歯・鍵・コルセット・腕時計・エレキバン・湿布・ホッカイロなど |
MRI検査の更衣では金属(磁性体)を外さないといけませんが、手術などによって体内に金属がある場合には原則検査を受けることはできません。
- 心臓ペースメーカーを留置されている方
- 人工内耳の方
- 古い人工心臓弁の手術を受けられている方
- 血管へのステント留置術を8週間以内に受けられた方
- 脳動脈クリップが入っている方
- 骨折等によりボルト固定がされたままの方
- 眼に微細な金属片が入っている方(または入っていると疑わしい方)
- 金属の義眼底の方
- 磁性アタッチメント義歯(入れ歯)の方
- その他体内に金属物を入れられている方
更衣をするタイミングは入室前or入室後!?
CT検査とMRI検査の更衣は、CT検査では検査室に入室前・入室後どちらのタイミングでも大丈夫ですが、MRI検査では検査室に入室する前に行わないといけません。
その理由は、MRI装置が強い磁力を発しているからで金属を持ち込むと装置に吸着されてしまいます。
吸着される強さは、ハサミやヘアピンなどの小物では飛んで行ってしまうほどの強さがあります。
また、車イスやベッドなどの大きな物がMRI装置に吸着されてしまった場合には装置の電源を切らないと取り外すことができないほどの力があります。
CT検査 | ・更衣は検査室に入室前・入室後どちらでもOK ・通常はCT検査室内で更衣を行う |
MRI検査 | ・更衣は検査室に入室前に行う ・入室前に金属探知機でチェックをする場合もある |
検査時間
CT検査の撮影時間は5分~15分、MRI検査の撮像時間は15分~30分になります。
この検査時間の差は画像データの収集方法の違いによるものです。
CT検査では撮影部位の横断面のデータを収集し、検査終了後にそのデータから任意の断面の画像を再構成します。
そのため、5~15分程度の短い時間で検査を終了することができます。
それに比べ、MRI検査は約5分の撮像を必要な断面の数だけ繰り返していきます。
そのため、5つの種類の撮像の指示があれば「5分・5分・5分・5分・5分=25分」の撮像時間になります。
撮像時間は指示が増えるほど延びるので、MRI検査はCT検査に比べ時間がかかる検査と言えます。
CT検査 | 5分~15分 | ・横断面データを収集、検査終了後に画像を再構成する |
MRI検査 | 15分~30分 | ・指示された断面(約5分)ごとに撮像する ・「5分+5分+5分+・・・」 |
放射線被ばく・身体への影響
CT検査はX線を用いて行う検査になるので放射線被ばくがあり、その被ばく量は健康診断で受ける単純胸部X線撮影の100~200倍になります。
そのため、妊娠中の方は検査を受けることが原則できません。
通常の方については身体への影響は出ない量の被ばく線量なので検査を受けても問題はありません。
MRI検査はX線を用いていないので放射線被ばくはありません。
ただ、眉墨や刺青、タトゥーなどをしている方は、何度も何度もMRI検査を受けていると徐々に色が変色してくることがあるので注意が必要です。
検査中の圧迫感
検査中の圧迫感を「体の固定」「検査中の寝台の動き」「検査中の音」の3つについて比較しました。
体の固定
CT検査、MRI検査ともに寝台に寝てベルトで体を固定した状態で検査を行います。
その際、CT検査は軽くベルトで固定をするだけですが、MRI検査はベルトに加えて目的とする部位に専用のコイルを装着しなくてはいけません。
どちらの検査も検査中に体を動かさないようにしますが、MRI検査の方がしっかり固定される上に専用のコイルもつけられるので圧迫感が大きいです。
検査中の寝台の動き
検査中は、CT検査では寝台が動きながら撮影が行われ、またガントリーもMRI装置に比べ大きくないのでそれほど圧迫感はありません。
それに比べ、MRI検査ではガントリーの中央部に目的の撮影部位が配置されるように寝台が移動し、検査が終了するまで寝台が動くことはありません。
また、そのガントリーも狭い洞窟のようになっているのでかなりの圧迫感があります。
検査中の音
CT検査では検査中の音はほとんどせず、息止めが必要な場合にはそのアナウンスが流れます。
それに比べ、MRI検査では「ギギギ」「ガガガ」「ゴゴゴゴ」など工事現場のような大きな機械音が鳴り響きます。
検査費用
検査費用はCT装置・MRI装置のスペックによって変化し、以下のようになります。
CTの性能 | 検査費用 | 保険適用(3割) |
---|---|---|
64列以上 | 14,500円 | 4,350円 |
16列以上64列未満 | 13,500円 | 4,050円 |
4列以上16列未満 | 12,000円 | 3,600円 |
それ以外 | 10,100円 | 3,030円 |
MRIの性能 | 検査費用 | 保険適用(3割) |
---|---|---|
3T以上 | 20,500円 | 6,150円 |
1.5T以上3T未満 | 17,800円 | 5,340円 |
それ以外 | 13,500円 | 4,050円 |
今回は検査を主に行う病院に多く設置されている「64列CT」と「1.5テスラMRI」において頭部の検査をした場合の検査費用を比較します。
検査費用 | 保険適用(3割) | |
---|---|---|
CT検査(64列) | 14,500円 | 4,350円 |
MRI検査(1.5T) | 17,800円 | 5,340円 |
検査だけの費用を比較するとMRI検査の方が金額が高く費用がかかることが分かります。
CT検査とMRI検査の違い|まとめ
CT検査とMRI検査の違いについて、今回比較した内容をまとめました。
CT検査 | MRI検査 | |
---|---|---|
装置の見た目 (ガントリーの長さ) | 100cm~150cm | 150cm~250cm |
撮影原理 | X線 (X線の吸収に関係) | 磁力 (水分子の量に関係) |
画像再構成 | 収集した横断面のデータから任意の断面を再構成 | 撮像時に任意の断面のデータを収集 |
画像 | 骨は白く、空気は黒 (X線の吸収率による) | 骨、空気は無信号 (水分子の量による) |
得意な撮影部位 | 脳・肺・腹部・骨 | 脳・脊髄・関節 |
得意な病変 | 頭部外傷・脳出血・くも膜下出血 | 早期の脳梗塞 |
検査室の構造 | 鉛シールド | 磁気シールド・電波シールド |
更衣 | 金属や硬質性のプラスチックを取り外す | 金属(磁性体)を取り外す ※更衣は入室前に行う |
検査時間 | 5分~15分 | 15分~30分 |
放射線被ばく | あり | なし |
体の固定 | 圧迫感(小) 軽いベルト固定のみ | 圧迫感(大) 専用のコイルとベルトでしっかり固定 |
撮影方法 | 寝台に寝た状態で撮影 (寝台は撮影中に動く) | 寝台に寝た状態で撮影 (寝台は撮影中は固定) |
検査中の音 | 静か | 工事中のような音でかなりうるさい |
検査費用 | 14,500円 (3割負担:4,350円) | 17,800円 (3割負担:5,340円) |
CT検査とMRI検査は、装置の見た目が似ているので同じ検査だと捉えてしまう方が多くいますが、2つの検査を細かく比較していくと、まったく異なる検査だということが分かります。
CT検査・MRI検査について疑問に思われる方は参考にしていただければと思います。
・CT検査をわかりやすく解説|検査を受ける前に知っておきたいこと!!
・MRI検査のわかりやすい解説|検査を受ける前に知っておきたいこと!!