CT検査はX線を使って身体の断面を撮影する検査です。
CTという名称は”Computed Tomography”を略したもので「コンピュータ断層撮影」という意味があります。
身体の周りからエックス線をあて、体を通過したエックス線情報をコンピュータで解析し、連続した断層画像(輪切りの画像)を得る検査になります。
連続した断層画像を薄くすることで、3D画像(立体的な写真)をつくる事も可能です。
今回は、CT検査についてわかりやすく解説していきます。
CTの撮影原理
撮影は装置の中にあるX線管と検出器が、対の状態で回転しながらデータ収集を行います。
- X線管:X線を発生する
- 検出器:撮影部位を通過したX線を受けとる
検出器で収集したデータは、撮影する部位の「X線の吸収率」の差に影響され、その差によって画像をつくることができます。
ものすごいスピードで回転するX線管
CT検査では装置の中にあるX線管と検出器が、対の状態で回転しながらデータ収集を行っていますが、1回転あたり最速0.275秒のスピード(装置により異なる)で回転しています。
この回転によって装置にかかるG(重力)は48.5Gにもなり、ジェットコースターに乗ったときのGが4~5Gと言われているので相当な負荷がかかっていることが分かります。
放射線被ばくの量は単純X線撮影の100~200倍
CT検査を受けることでの放射線被ばくは、撮影部位や撮影条件、造影剤の使用によって変わりますが、単純X線撮影検査の100~200倍と言われています。
ただ、被ばく線量が単純X線撮影検査よりも多いからと言って、身体に悪い影響が出るほどの放射線被ばくをしているわけではないので安心して検査を受けることが可能です。
また、最近のCT装置には、自動露出機構といって個人の体格に合わせてX線の量が決定するシステムが備わっているため、以前に比べて放射線被ばくの量も減少してきています。
CT装置の性能
CT装置は一度にどれだけ複数の断面を撮影できるかで性能が分けられ、この”一度に撮影”とは、ガントリー内をX線管が1回転するたびにということです。
この撮影できる断面数は「○○列」というふうに表されており、検出器が何列並んでいるかを示しています。
もちろん、列数が増えるほど多くの断面を一度に撮影することができることになります。
下の表に、医療施設や研究機関で使用されているCT装置をまとめました。
クリニックや小さな病院では4列や16列のCT装置が用いられていることが多く、大きな病院では64列のCT装置が用いられていることが一般的です。
また、128列以上のCT装置は主に研究機関に設置されています。
CTの性能(○○列) | 撮影断面数 |
---|---|
4列CT | 4断面を同時に撮影 |
16列CT | 16断面を同時に撮影 |
32列CT | 32断面を同時に撮影 |
64列CT | 64断面を同時に撮影 |
128列CT | 128断面を同時に撮影 |
320列CT | 320断面を同時に撮影 |
多列のCT装置になるほど撮影時間を短縮できる
多くの断面を1回転の間に撮影できるということは、一度に広い範囲をまとめて撮影できるだけではなく撮影時間も短縮することができます。
この撮影時間の短縮は、検査を受ける方の負担の軽減にも繋がります。
仮に、4列のCTと64列のCTの撮影条件を同じにし、胸腹部CT(約100㎝)を5㎜間隔で撮影したとすると、4列CTでは撮影時間が50秒かかるのに対し、64列CTではたった4秒で撮影が終了することが分かります。
CT | 1回の撮影距離 | 必要な回転数 | 1回転が1秒の場合 |
---|---|---|---|
4列CT | 5㎜×4列=2㎝ | 100cm÷2㎝=50回転 | 1撮影に50秒 |
64列CT | 5㎜×64列=32㎝ | 100cm÷32㎝≒4回転 | 1撮影に4秒 |
「心臓」の撮影は多列CTでのみ行われる
体の臓器の中には、心臓のように絶えず動いている臓器もあります。このような臓器は、CT撮影をするからといって止めることはできないため、1拍動の間に撮影を済ますことができるような撮影スピードと広い撮影範囲が求められます。そのため、心臓CTの撮影を行っている病院では基本的に64列のCTが設置されています。
- 16列CT装置以上:骨折などの疾患
- 64列CT装置以上:心臓、広い範囲の血管
CT画像のつくり方
CT検査では最初のデータ収集で撮影部位の横断面(下の画像:緑の断面)のデータを収集します。
そして、その横断面のデータを元に任意の断面の画像を再構成することができます。
また、任意の断面だけではなく3D画像もつくることができます。
横断面画像のデータ収集は薄い厚さで行う
CT撮影を行うときには、あとで画像の再構成をすることを考えて薄い厚さで撮影をしておくことが一般的です。
このときの撮影断面の厚さは撮影時に設定しますが、ほとんどの場合0.625㎜以下の厚さになります。
これ以上の厚さで撮影を行ってしまうと、画像を再構成した際にきれいな画像をつくることができない場合があります。
逆に、元の横断面のデータが薄い厚さであるほど情報量が多いため、再構成した画像はきれいな画像になります。
再構成された「横断面・冠状面・矢状面」の画像
CT撮影での得意な撮影部位である頭、胸部、腹部のCT画像です。「左:頭部CT、中央:胸部CT、右:胸腹部CT」のCT画像になります。
頭部CT | 胸部CT | 胸腹部CT |
---|---|---|
横断面 | 横断面 | 横断面 |
冠状面 | 冠状面 | 冠状面 |
矢状面 | 矢状面 | 矢状面 |
再構成された「3D」の画像
3D画像は細かい診断にはあまり用いられませんが、大まかな状態の把握や患者への検査説明にはとても有用な画像になります。
患者からすると普通の断面像を見せられて説明されるよりも、3D画像を見ながらの方が医師の説明を理解しやすいです。
いろいろな病院のホームページに載せられているCT検査の3D画像を集めてみました。
得意な撮影部位と病変
CT検査はX線の吸収率の差を利用して画像がつくられるため、X線の吸収率の差が多い部位では診断能の高い画像を撮影することができます。
また、CT撮影は空間分解能(細かく見る能力)が高いので、1㎜以下のとても小さな病変も見つけることが可能です。
得意な撮影部位 | 肺、肝臓、膵臓、腎臓、骨など |
得意な病変 | 肺炎、肺がん、胸水、腹部腫瘍、尿管結石、腎結石、脳出血、副鼻腔炎、骨折など |
CT検査のながれ
CT検査には、単純CT撮影と造影剤を使用して行う造影CT撮影があります。
造影CT撮影で使用する造影剤には副作用がありますが、得られる情報量はとても多く「癌の疑いがある場合」や「血管を描出する場合」には必ず用いられます。
単純CT撮影と造影CT撮影では検査のながれに違いがあるので別々に説明していきます。
単純CT検査のながれ
単純CT検査は、入室から退室までを5~15分程度で終了することができます。
- 検査室に入室
- 必要な場合は更衣を行う。
- 寝台に寝る。
- 撮影(寝台が動いていきます)
- スカウト撮影(本スキャンを行う位置を決める撮影)
- 本撮影(必要に応じて息止めを行います)
- 撮影終了
- 更衣
- 退室
造影CT検査のながれ
造影CT検査は、入室から退室までを15~20分程度で終了することができます。
単純CT検査よりも検査時間が長くなるのは、単純撮影を行った後に造影剤を使用した撮影を追加で行うからです。
また、造影剤を使用するので、検査前に副作用の説明と検査の同意書へのサインを行う必要があります。
- 造影剤の問診をとる(アレルギー、既往歴、腎機能など)
- 検査室に入室
- 必要な場合は更衣を行う。
- 寝台に寝る。
- 腕の静脈にルートを確保する(造影剤を入れるため)
- 撮影(寝台が動いていきます)
- スカウト撮影(本スキャンを行う位置を決める撮影)
- 単純撮影(必要に応じて息止めを行います)
- 造影撮影(造影剤を注入しながら撮影)
- 撮影終了
- 腕のルートをはずします。
- 更衣
- 退室
- 造影剤の副作用が出ないか少し様子をみます。
造影CT検査の有用性と副作用
造影CT検査では、単純CT撮影では撮影することのできない血管や腫瘍などを造影剤を使用することにより描出することができます。
ただ、造影剤を使用することで副作用が出ることもあり、その使用にあたってはしっかりした説明をしたあとに同意書へのサインを求められます。
造影剤を使用することで、
- 造影剤を使用していないときの画像
- 造影剤を使用してすぐの画像(動脈の画像)
- 造影剤を使用して少ししてからの画像(静脈の画像)
といった同じ断面でも複数の画像を得ることができます。
これにより、判別が難しい腫瘤病変などの確認を行うことができます。
造影剤の使用によって副作用が出現する方もいますが、ほとんどの方は異常なく造影CT検査が終わります。
また、副作用にも軽いものから重篤なものまであり、検査中に重篤な副作用が出現した場合にはすぐさま検査を中止します。
副作用 | 症状 |
---|---|
軽い副作用 | 吐き気、かゆみ、発疹など 副作用の頻度としては、5%未満といわれています。 |
重い副作用 | 血圧低下、呼吸困難、意識障害、腎不全、痙攣など 副作用の頻度としては、2.5万人に1人といわれています。 |
血管外漏出 | 稀に造影剤が血管外に漏れ、痛みや腫れが生じることがある |
また、副作用が出現しやすい方にも特徴があり、検査前の問診で以下のような既往がある方は検査を行わない場合もあります。
- 今までに造影剤による副作用を起こしたことのある方
- 喘息などアレルギー性疾患をお持ちの方(アレルギー体質の方)
- 心臓の病気、腎臓の病気、糖尿病、甲状腺の病気をお持ちの方
造影剤による副作用の発生をあらかじめ予知することはできませんが、検査前に水分を多めに摂ることで副作用の発生頻度が少なくなると言われています。撮影部位によっては水分を摂れない場合もあるので、検査前に確認しておくことが重要です。
CTの検査費用
「CT装置の性能」の説明で、”○○列”によってCTの性能が異なることを説明しましたが、CT撮影の検査費用もCT装置の性能ごとで異なります。
そして、もちろん性能が良くなるほど検査費用も高く請求できるように設定されています。
CTの性能 | 検査費用 | 保険適用(3割) |
---|---|---|
64列以上 | 14,500円 | 4,350円 |
16列以上64列未満 | 13,500円 | 4,050円 |
4列以上16列未満 | 12,000円 | 3,600円 |
それ以外 | 10,100円 | 3,030円 |
CT検査でよくある質問 Q&A
なかなか受ける検査ではないからこそいろいろな質問がでます。CT検査を受けるにあたってよくある質問をまとめました。
妊娠中でも検査を受けることはできますか?
妊娠中にCT検査を受けると、胎児に奇形などの影響が出ると心配される方がいますが、胎児に奇形などの影響が出る線量は研究によって調べられていて、その線量を超えないように検査が行われるようになっています。
ただ、ほとんどの医療施設において、妊娠の可能性がある方や妊娠中の方に対してのCT検査は行われていません。
体の中に金属がありますが検査を受けることはできますか?
手術などで体の中に金属が残っている場合でもそのまま検査を行うことが可能です。
他の病院でCT検査を受けていても近い期日でCT検査を再度受けてもよいですか?
複数の医療施設を受診している場合、それぞれの病院でCT検査の指示が出ることがあります。
このようなときは放射線被ばくが気になってしまいますが、放射線被ばくの影響は身体に蓄積するわけではないので心配することはありません。
ただ、同じ撮影部位のCT検査を行う場合には、他の医療施設で撮影した画像データをその医療施設に提出すれば、検査を受けなくてもいい場合があるので、病院受診の際には受付時に問い合わせを行いましょう。
CT検査をわかりやすく解説|まとめ
CT検査は病院やクリニックにおいて頻繁に行われている検査の一つであり、短い検査時間で多くの情報を得ることができます。
とは言っても、検査を受けるにあたりその中身が気になる方もいらっしゃると思います。
そのような方は検査前にCT検査がどのようなものなのかを確認してもらえらばと思います。
また、CT検査と似ている検査にMRI検査というものもあります。
CT検査とMRI検査の違いについても別の記事にまとめましたので興味がある方はご参照ください。