病院で行う検査の一つに「骨密度検査」というものがあります。
この骨密度検査は、骨がもろくなる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)という病気の検査において、とても重要な意味を持ちます。
今回は、この骨密度検査について検査の概要やながれをまとめていきます。
骨密度検査とは?
骨密度検査は、その名前の通り”骨の密度”、つまり「骨がどのくらいの強さを保っているか」を調べる検査になります。
骨の強さを調べる意味があるの???と、思われる方もいるかもしれませんが、骨がもろくなるということは、それだけ骨折しやすくなるということです。
骨密度は、出産後の女性や閉経後の女性で急激に下がりやすいことがわかっているため、骨密度を検査し治療を行うことは骨折のリスクを減らすためにはとても重要なことだといえます。
骨がもろくなってしまっている状態を「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」と言い、骨粗鬆症の患者さんは定期的に骨密度を測定し、薬を処方してもらいます。
骨密度検査は、腰椎・股関節・前腕骨のいずれかで行い、検査部位の違いは、検査を行う医療施設に設置されている医療機器によります。
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
人は、年をとることによって、徐々に骨密度が低下していきます。
そうすると、若い頃は固く頑丈だった骨の中は、スポンジのようにスカスカになっていきます。
骨の中が、スカスカになりもろくなると、ちょっとした転倒や重い物を持つなどの行動で、骨折を起こしやすい状態になります。
骨折を起こしやすいほど骨がもろくなった状態を骨粗鬆症(こつそしょうしょう)といいます。
下に、「正常な腰椎(腰の骨)の断面」と「骨粗鬆症の腰椎の断面」の写真を記載しました。
写真を見てわかるように、正常な写真では、骨の中身はつまっていますが、骨粗鬆症の写真では、骨の中身はスカスカで空洞が目立っています。
骨粗鬆症の発生原因になる「骨代謝」の乱れ
人の骨は、骨代謝として「骨の吸収」と「骨の形成」を繰り返し、骨代謝のバランスを保つことによって骨の強さを保っています。
「骨吸収」は、古くなった骨が破骨細胞によって分解され、その結果カルシウムが骨から血液中へ放出されることをいい、「骨形成」は、骨芽細胞によって新しい骨が作られることをいいます。
この骨代謝には女性ホルモンであるエストロゲンが深く関わっています。
エストロゲンは、骨吸収をゆるやかにする働きをし、骨からのカルシウム放出を抑制しています。
そのため、女性は閉経後に女性ホルモンの分泌が低下し、エストロゲンが著しく低下すると、骨密度が低下するため、骨粗鬆症を発症するリスクが高くなります。
骨粗鬆症の患者の約8割が女性と言われています。
骨密度検査の種類
骨密度検査の種類には「DEXA法(デキサ法)」「MD法」「超音波法」の3種類があります。
DEXA法(デキサ法)
DEXA(デキサ)法は「Dual-energy X-ray Absorptiometory」の略で、強さの違う2種類のX線を骨に照射し、X線の吸収率の差で骨密度を計算します。
検査部位は、「腰椎(腰の骨)、大腿骨の頚部(太もものつけ根)、前腕など」になります。
MD法
MD法は、手の中指と厚さの違うアルミニウム板をX線で同時に撮影して、X線画像での骨とアルミニウムの濃度を比較する方法です。
DEXA法に比べて簡単な方法ですが、正確性はDEXA法の方が良いです。
超音波法
足のかかとに超音波を当てて骨の強さを測定します。
骨密度検査の検査の手順
骨密度検査は、5分~20分程度で終わる簡単な検査で、痛みもありません。
DEXA法(デキサ法):前腕
前腕の骨の骨密度を調べます。
時計などをはずし、検査機器の所定の位置に腕を固定します。
検査時間は5分程度です。
DEXA法(デキサ法):腰椎・股関節
腰椎や大腿骨の頚部の骨密度を調べます。
洋服のチャックやボタンが検査のさまたげになるため、検査着に着替えて検査をおこないます。
検査中は検査台に寝た状態で動かないようにするだけです。
検査部位は、
- 腰椎+大腿骨頚部
- 腰椎のみ(大腿骨頚部を手術している場合)
- 大腿骨頚部のみ(腰椎を住朮している場合)
の3パターンあります。
検査時間は、腰椎と大腿骨頚部をどちらも検査した場合でも20分程度です。
MD法
アルミの板と一緒に手のレントゲン撮影を行います。
検査時間は5分程度です。
超音波法
靴と靴下を脱ぎ、かかとを所定の位置に合わせて検査機器に置きます。
検査時間は5分程度です。
骨密度検査を受けるのにかかる医療費
骨密度検査はその種類によってかかる費用が異なります。
また、そのかかる費用の範囲は以下の3つに分けられています。
- DEXA法による腰椎撮影
- 同日に大腿骨撮影を行った場合には加算
- MD法、SEXA法等
- 超音波法
患者様に分かりやすいように書き換えると以下のようになります。
- 「腰の骨」と「太もものつけ根の骨」の骨密度測定
- 「手のレントゲン写真」の骨密度測定、「腕の骨」の骨密度測定
- 踵(かかと)の骨密度を超音波で測定
①「腰の骨」と「太もものつけ根の骨」の骨密度測定
上記の画像のように寝台に寝た状態で、 ”腰椎(腰の骨)の骨密度測定” ”大腿骨の頚部(太もものつけ根)の骨密度測定” を行います。
寝た状態での骨密度測定は整形外科病院で行うことが多いです。
検査は、「腰椎のみ」 「大腿骨頚部のみ」 「腰椎 + 大腿骨頚部」の3パターンありますが、そのほとんどが「腰椎 + 大腿骨頚部」になります。
検査費用
腰椎のみ 3,600円 (3割負担:1,080円)
大腿骨頚部のみ 3,600円 (3割負担:1,080円)
腰椎+大腿骨頚部 4,500円 (3割負担:1,350円)
診察代 + 検査費用 + 薬代
初診 2,820円 (3割負担:846円)
再診 1,240円 (3割負担:372円)
薬代 骨粗鬆症ならそれに合わせた薬が処方されます。
診察代 + 検査代 + 薬代
400~900円 + 1000~1500円 + 薬代 = 2,000~3,000円 + 薬代
②「手のX線写真」の骨密度測定、「腕の骨」の骨密度測定
”前腕の骨密度測定” では、骨密度測定機器に腕(手首から肘の部分)をセットして骨密度を測定します。
前腕の骨密度測定は、骨密度測定の中でも特に簡易的なもので5分程度で検査も終わります。
”手のX線写真を用いた骨密度測定” では、「アルミスケール」と一緒に両手の写真を撮影し、その濃度を比較することで骨密度測定を行います。
検査費用
1,400円 (3割負担:420円)
診察代 + 検査費用 + 薬代
初診 2,820円 (3割負担:846円)
再診 1,240円 (3割負担:372円)
薬代 骨粗鬆症ならそれに合わせた薬が処方されます。
診察代 + 検査代 + 薬代
400~900円 + 420円 + 薬代 = 1,000~1,500円 + 薬代
③踵(かかと)の骨密度を超音波で測定
”踵(かかと)の骨密度の測定” は、靴と靴下を脱ぎ、踵を所定の位置に合わせて検査機器に置きます。
検査時間は5分程度しかかからず簡単な検査になります。
検査費用
800円 (3割負担:240円)
診察代 + 検査費用 + 薬代
初診 2,820円 (3割負担:846円)
再診 1,240円 (3割負担:372円)
薬代 骨粗鬆症ならそれに合わせた薬が処方されます。
診察代 + 検査代 + 薬代
400~900円 + 240円 + 薬代 = 800~1,200円 + 薬代
簡易的に受けることができる骨密度測定
骨密度測定は、少ない被ばくで簡単に行うことができ、検査の時間も短くてすみます。
先ほど説明した通り、出産後の女性や閉経後の女性は骨密度が急激に下がりやすく注意が必要です。
特に、閉経後の女性は、骨密度を定期的に測定することで、骨折の予防にも繋がりますので、検査を受けることをおすすめします。