どちらの検査も人間ドックなどで行われていますが、どちらの検査が優れているのでしょうか?
どうせ検査を受けるのなら診断能力が高い方の検査を受けたいものです。
今回は、胃透視検査と胃カメラ検査の検査の中身と比較、どちらの検査が優れているのかなどについて説明していきます。
胃透視と胃カメラはどんな検査???
胃透視検査と胃カメラ検査はどちらも”胃”を調べる検査ですが、検査の方法はまったく異なります。まずはそれぞれの検査がどのようなものなのかをわかりやすいく説明していきます。
胃透視検査とは?
胃透視検査は、透視検査の中で最もポピュラーな検査です。”胃を透視する検査”と名前がついている通り、胃・食道・十二指腸などをX線で透視しながら写真を撮り観察するもので、検査のながれを簡単にまとめると以下のようになります。
- 検査前に胃を空にする(絶食)
- 発泡散を飲んで胃を膨らます
- バリウムを飲む
- ゲップを我慢しながらレントゲン撮影(10~15枚程度)
- 下剤を飲んでバリウムを早く出す
検査前は必ず絶食する
胃の検査を行うので胃の中を空っぽの状態にしないといけません。前日の夜から絶食する必要があります。また、水分もお茶・水・白湯のみの摂取になります。
発泡散とバリウムの役割
検査のときには発泡散とバリウムという薬を飲みますが、この2つの薬にはそれぞれ以下のような目的があります。
- 発泡散 :胃を風船のように膨らませる
- バリウム:膨らんだ胃の壁に付着させ写真を撮りやすくする
発泡散は胃を風船のように膨らませますが、胃がパンパンになるのでゲップが出やすくなります。検査時にはゲップを出さないように指示を受けますが、もしゲップを出て胃がしぼんでしまった場合には、再度発泡散を飲んで胃を膨らませます。
検査中は体位変換が必要
胃透視検査では胃を膨らませた状態でいろいろな角度の写真を撮るので、必要な角度に合わせて体の向きを変える要があります。体の向きは「正面・仰向け・うつぶせ・斜め向き」など写真を撮る診療放射線技師さんの指示に従って変えていきます。
検査後は下剤を服用する
検査で飲んだバリウムは固まりやすいため、早めに体外に出さないといけません。そのため、検査後は下剤を服用します。バリウムは白い便として排出されるので、白い便が出なくなったらバリウムが排出され終わったということになります。
バリウムは障害陰影(診断の邪魔になる)になってしまうため、排出され終わるまでは腹部のCT検査や腹部のレントゲン撮影検査などを行えません。
胃カメラ検査とは?
胃カメラ検査も胃透視検査と同じように胃がん健診においてポピュラーな検査で、胃の中を内視鏡(小型のCCDカメラ)で直接観察する検査になります。
検査のながれを簡単にまとめると以下のようになります。
- 検査前に胃を空にする(絶食)
- 喉にスプレー麻酔をする(必要な場合は麻酔で眠らせる)
- 寝台に横になる
- 内視鏡を口から挿入する
- 内視鏡で胃の中を観察し写真を撮る
検査前は必ず絶食する
胃の検査を行うので胃の中を空っぽの状態にしないといけません。前日の夜から絶食する必要があります。また、水分もお茶・水・白湯のみの摂取になります。
喉(のど)と全身に麻酔をする
胃カメラ検査では内視鏡を口から挿入します。挿入時は喉に内視鏡があたってしまい嚥下反射(喉の奥にものがあたるとオエっとなること)が必ず起こります。この嚥下反射は検査を受ける方にとってかなりの負担になるので、喉への局所麻酔に加え、全身麻酔で検査中は眠るようにします。
全身麻酔をする場合には運転しないように車での来院を控えるように言われます。車の運転をする場合には喉の局所麻酔のみで検査を受けることもできますが、嚥下反射が激しく出るのでかなりきつい状態での検査になります。
内視鏡には鼻から挿入するタイプのものもあり、そのタイプの内視鏡を使用する場合、検査を受ける方の負担はかなり軽減します。
胃透視と胃カメラ|2つの検査を比較
①「絶食」はどちらの検査においても必須!!
胃透視検査や胃カメラ検査は”胃”を診る検査なので、胃を空っぽの状態にして検査を行っていきます。そのため、検査前は前日の夕食、または昼食からの絶食をする必要があります。水分摂取は可能ですが飲むことができるのは「水・お茶・白湯」ぐらいです。もし検査前の絶食指示を守らず検査をした場合には、胃の中に食べ物が残っているため正確に検査・診断ができなくなってしまいます。
②「体位変換」の有無は?
胃透視検査では、寝台に乗った状態で「正面・仰向け・うつぶせ・斜め向き」など指示の通りに体の向きを変えないといけません。それに比べ、胃カメラ検査では寝台に横向きになって寝るだけで体位変換などは行う必要がありません。
胃透視検査において体位変換が必要な理由
胃透視検査では、検査中に寝台が寝たり立ったりしている最中、体の向きを変化させる必要があります。この体位変換をしているのは発泡剤で膨らませた胃壁にバリウムを付着させるためです。胃壁にバリウムを付着させることで、レントゲン写真上に胃壁の状態をきれいに写すことができます。イメージとしては、膨らませた風船の内側に絵の具を付着させるために、風船をいろいろな方向に動かしている感じです。
胃カメラ検査では体位変換が必要ない理由
胃カメラ検査は、胃透視検査のように体位変換をする必要はなく、横向きに寝た状態で検査を行います。体位変換がいらない理由は、胃カメラ検査では検査をする医師が内視鏡を動かしながら、胃の中の観察したい場所を見ることができるからです。
③「検査時間」の長さは?
検査にかかる時間は胃透視検査が約20分、胃カメラ検査が約5分程度で、胃透視検査の方が長くなります。胃透視検査の方が検査時間がかかる理由は、検査中に”体位変換”をする必要があるからです。そのため、体位変換がうまくできず、診断に必要な写真を撮ることができなければ、検査時間は余計にかかってしまうことになります。
胃透視検査 | 約20分 |
胃カメラ検査 | 約5分 |
胃透視検査における検査時間延長の要因になるもの
胃透視検査の検査時間を延長させる要因となるものは以下のようなものが挙げられます。
- 患者の体位変換がうまくできない
- 写真の撮影時の患者の息止めがうまくできない
- 診療放射線技師の体位変換の指示がへたくそ
これらの要因をなくすためには、検査前の説明や検査への理解がとても重要になります。
胃カメラ検査における検査時間延長の要因になるもの
胃カメラ検査では、検査中に異常所見が見つかると生検(病変の一部を採って顕微鏡で詳しく調べること)を行うため検査時間を延長させる要因になります。
この際、ポリープが見つかった場合には切除後の出血リスクが高いため、外来による検査時には行わずに入院して行うみたいです。
大腸カメラ検査においてはポリープが見つかった場合にはそのまま切除を行うみたいです。
④「検査による負担」は?
胃透視検査と胃カメラ検査の2つの検査において、「検査のきつさ」を比較すると”胃を膨らませた状態でバリウムを飲み、体位変換をする”胃透視検査の方が格段に大変です。しかも、飲んだバリウムは固まりやすいため、検査後に下剤を飲んで出し切らないといけません。これに比べ、胃カメラ検査では全身麻酔で眠ってしまえば気づいたときには検査は終わっています。ただ、胃カメラ検査においても、全身麻酔はせずに喉の局所麻酔だけで検査を行う場合には嚥下反射によってかなりきつい検査になってしまいます。
胃透視検査のきつい部分
胃透視検査においてきつい部分は以下のようなものになります。
- 発泡散によるゲップを我慢すること
- バリウム(白いドロドロの液体)が非常に飲みづらいこと
- ゲップを我慢しながらの体位変換しないといけないこと
- 検査後に下剤を飲まないといけないこと
バリウムは白くドロドロした液体で非常に飲みにくいのが特徴です。最近ではイチゴ味やバナナ味などのバリウムもあるみたいですが、準備している医療施設は少ないです。
胃カメラ検査のきつい部分
胃カメラ検査では内視鏡を口から喉を通って胃まで挿入するため、嚥下反射(「おえっ」とえづくこと)がきつい検査になります。ただ、全身麻酔をしてもらえば寝ている間に終わるので、嚥下反射の心配はありません。
最近では、口からの内視鏡挿入による嚥下反射の負担を軽減させるために、鼻から入れるタイプの内視鏡で胃カメラ検査を行う医療施設もあります。もしも、口から内視鏡を挿入することに抵抗がある場合には、鼻から入れるタイプの内視鏡を使用している医療施設で胃カメラ検査を受けることをおすすめします。
⑤「放射線被ばく」の有無は?
胃透視検査ではX線を使用するために放射線の被ばくが伴います。また、透視検査はX線を出しながらの検査なので、通常のレントゲン撮影と違い放射線被ばくの量も多くなり腹部単純レントゲン撮影の50~100倍とされています。これに比較して胃カメラ検査では放射線被ばくはありません。
放射線被ばくが増える要因
検査中のX線は、胃がきれいに見えるように患者の体の厚さに合わせて自動で調整されます。そのため、体の厚い患者ほど放射線被ばくの量は増えます。
また、放射線被ばくの量は検査の時間にも影響され、検査の時間が延びるほど、それだけX線を浴びている時間も増えるので放射線被ばくの量が増えることになります。
- 体の厚い患者:X線は多く出る
- 体の薄い患者:X線は少なく出る
⑥「検査の実施者」は?
胃透視検査は基本的に診療放射線技師さんがその業務を行います。このことは、医療施設、検診車、どちらも変わりはありません。そのため、胃透視検査では診療放射線技師さんが撮影した画像を医師が診断するというながれになります。それに比べ、胃カメラ検査は医師が検査を実施します。クリニックなどの小さな病院では診断医が胃カメラ検査も行いますが、大きな病院になると内視鏡の専門医が胃カメラ検査を担当している場合があり、画像を2人の医師で確認している場合もあります。
胃透視検査 | 胃カメラ検査 (小さい病院) | 胃カメラ検査 (大きな病院) | |
---|---|---|---|
検査の実施 | 診療放射線技師 | 主治医 | 検査担当医師 |
画像診断 | 読影医・主治医 | 主治医 | 読影医・主治医 |
患者への説明 | 主治医 | 主治医 | 主治医 |
胃カメラ検査は検査中に生検が可能!?
胃カメラ検査では検査中に異常所見が見つかった際にはそのまま生検(病変の一部を採って顕微鏡で詳しく調べる検査)を行うことが可能です。手術をする場合には後日入院が必要ですが、検査時に生検でどのようなものかを調べてもらえることは嬉しいことです。
胃の検査を受けるなら胃透視と胃カメラのどちらがおすすめなのか?
胃透視検査 | 胃カメラ検査 | |
---|---|---|
食事 | 絶食 | 絶食 |
検査中の体位変換 | たくさんある | なし |
検査時間 | 約20分 | 約5分 |
検査による負担 | ・発泡散によるゲップの我慢 ・バリウムがまずい ・下剤でバリウムを早く便で出す必要がある | 嚥下反射(全身麻酔の場合は気づかない) |
放射線被ばく | あり | なし |
検査の実施者 | 診療放射線技師 | 医師 |
観察部位 | 胃・それ以外は微妙 | 胃・咽頭・喉頭・食道など(胃カメラが通る部分は観察可能) |
検査中の生検 | 不可 | 可能 |
胃透視検査と胃カメラ検査を比較した結果を一覧表にしました。
この内容を踏まえ、胃の検査を受ける場合にどちらの検査がおすすめなのかを考えると、
- 体位変換がない(麻酔で寝ている間に終わる)
- 検査時間が短い
- 発泡散、バリウム、下剤を飲まなくてもいい
- 放射線被ばくがない
- 検査を医師がしてくれる
- 内視鏡で直接口から胃までを観察してもらえる
- 検査中に生検が可能
と、さまざまな点で優れている「胃カメラ検査」の方がおすすめです。
日本において胃がん検診が推奨される年齢は50歳以上とされていますが、50歳になるまで胃がん検診をしなくてもよいということではありません。
繊細な臓器である”胃”を大切にするためにも、気になる方は胃カメラ検査を受けてみましょう。